ビジネスシーンなどでよく使われる「取り急ぎ」とは、「とりあえず急いで」という意味の言葉です。

おもにメールなどで、至急用件などを伝えるときに使う、便利な表現です。文末に「取り急ぎ○○まで」「取り急ぎ失礼いたします」などの形で使われます。

また「取り急ぎ」は、「間に合わせの不十分な対応」の意味も併せ持っているため、正式な対応ではないことも覚えておきましょう。

取り急ぎをメールで使う時の注意点6つ

「取り急ぎ」は、急用を告げるときに使える便利な表現ですが、使う際にはいくつかの注意が必要です。間違った使い方をすると、相手に不快な思いを与えかねません。

「取り急ぎ」をメールで使うときに、注意する点を6つご紹介します。

注意点1:後日改めて連絡する

「取り急ぎ」はあくまでも「急用」のため、できるだけ速く相手に伝えることが最優先されます。そのため、取り急ぎのメールだけでは詳細を充分伝えきれなかったり、後から状況が変わってきたりすることもあります。

「取り急ぎ」は「とりあえず」の意味も含んでいるため、メールをもらった人は、後から正式な連絡が来るのを待っていることもあります後日落ち着いてから、電話やメールなどで改めて詳細を伝えましょう。

注意点2:目上の人には使わない

「取り急ぎ」のメールは、至急伝えたいという自分の都合だけで、相手の状況を考えずに、一方的に送り付けてしまう面があることも知っておきましょう。

親しい人や家族にはあまり問題はありませんが、目上の人に「とりあえず急いでいるから送る」というのは、失礼にあたります。

目上の人には「とりあえず」の意味を含まない、「一方的なご報告で失礼いたします」のような表現に置き換えて使いましょう。

注意点3:お礼の時には使わない

メールで「取り急ぎお礼申し上げます」というのは、急いで感謝の気持ちを伝えられるため問題がないように考えられます。

ですが、お礼のような感謝の気持ちは「とりあえず間に合わせ」で伝えるものではありません。感謝の気持ちが整っていないのに、とりあえず形だけお礼をするような、軽い印象を相手に与えてしまいます。

注意点4:受信から返信まで間が空いた時は使わない

メールを受信してから日にちが経ってしまった場合、返信では「取り急ぎ」の表現を使わないように注意しましょう。

例えば、メールで回答を求められていた件に対して、3日も経ってから「取り急ぎご報告いたします」と返信をするのは、間違った使い方です。

注意点5:語尾を省略しない

「取り急ぎ」のメールでよく使われるのが「取り急ぎ○○まで」のように、「まで」で止める中途半端な形です。「取り急ぎ」は、「とりあえず」という意味を含んでおり、語尾を省略してしまうと、さらにいい加減な印象を与えます。

「取り急ぎ○○にて、失礼いたします」のように、最後まで文を完成させましょう。「取り急ぎ」の後には、「ご連絡いたします」「ご報告いたします」など、内容によって語尾を使い分けましょう。

注意点6:頻繁に使わない

「取り急ぎ」の表現は、特に急ぎの用件でなくても、毎回決まり文句のようにメールで使いがちです。頻繁に使っていると、いつもその場しのぎの雑な対応をしている、悪い印象を与えかねません。

「取り急ぎ」は、本当に至急伝えたいときにだけ、状況や相手を選んで使いましょう。その際には、至急メールを送る失礼をお詫びする言葉を添えましょう。

取り急ぎを使ったメール文例

では、上記の「取り急ぎをメールで使う時の注意点」の6点を踏まえて、具体的に「取り急ぎ」を使った、メールでの文例を見てみましょう。

実際にメールを送るときに参考にして、ぜひご活用ください。

1:取り急ぎメールにて失礼いたします

メールで簡単に連絡することの失礼をお詫びするには、「取り急ぎメールにて失礼いたします」という言葉を使いましょう。内容によっては、後から詳細を連絡したり、返信をもらう必要もあるため、このメールだけで済ませないようにしましょう。

例文を見てみましょう。

来月のイベントですが、会場の都合により延期になりました。
お忙しいところ、大変申し訳ありません。
取り急ぎメールにて失礼いたします。

2:略儀ながら取り急ぎお礼申し上げます

「取り急ぎ」を使ったお礼のメールでも、組み合わせる言葉を選べば失礼に当たりません。

「略儀ながら」は、「簡単ではございますが」という恐縮した意味があるため、丁寧で控えめな印象を与えます。「略儀ながら取り急ぎお礼申し上げます」の表現で感謝を述べましょう。後日会ったときには、直接お礼を言いましょう。

以下が例文です。

「本日はお招きいただき、ありがとうございました。
略儀ながら取り急ぎお礼申し上げます。」

3:取り急ぎご報告いたします

ビジネスメールでは、「取り急ぎ」を用いた表現が便利です。取引先には、雑な文にならないように注意が必要です。「取り急ぎ」に「ご報告いたします」や「ご報告申し上げます」を付けて、かしこまった文にします。

以下は例文です。

「本日見積書を送付いたしました。ご検討いただけたら幸いです。取り急ぎご報告申し上げます。」
「会議の日時が決まりました。取り急ぎご報告いたします。」

取り急ぎの言い換え表現5つ

「取り急ぎ」は、いつでも万能に使える表現ではありません。「取り急ぎ」を使いにくい目上の人や、状況では、他の表現で言い換えることも可能です。

いつも「取り急ぎ」を使い過ぎている人も、言い換えのバリエーションを知っておくと、いざというときに役に立つでしょう。より相応しい表現を選び、メールに活用しましょう。

「取り急ぎ」の言い換え表現を5つご紹介します。

まずは

「まずは」は、「最初に」「とりあえず」という意味を強調した言葉で、「取り急ぎ」に似た表現です。「取り急ぎ」のような堅苦しさはないため、誰でも使いやすいでしょう。

「まずは」は、「最初」という意味合いが強く、後に続く対応が求められがちです。その後の対応をしっかりとこなしましょう。

一旦

「一旦」は、「ひとまず」「一時的に」という意味の言葉で、「取り急ぎ」の持つ「とりあえず」と似た意味を持っています。

ですが、「一旦」はメールなどの挨拶文ではあまり使われません。

略儀ではございますが

「略儀ではございますが」は「正式ではない、簡単なやり方ですが」という意味であり、メールや手紙に用いられる、少し硬い印象の表現です。直接会って伝えられず、簡素化したメールで申し訳ありませんが、という恐縮した気持ちがこもっています。

「略儀ではございますが」の後に「取り急ぎ」を付け、「略儀ではございますが、取り急ぎ○○にて失礼いたします」と表現することができます。

末筆ながら

「末筆ながら」は「最後ではございますが」という意味で、手紙やメールなどの結びの言葉として使われます。「取り急ぎ」のような至急伝えるという意味合いはなく、特に伝えたいことがなくても、締めの決まり文句のように用いられやすいでしょう。

〜のみで恐縮ですが

のみで恐縮ですが」は「メールのみで恐縮ですが」のように使います。「本来は会って直接伝えるべきところを、メールだけで伝えることに恐縮し、申し訳なく思う気持ちが現れている言葉です。

「メールのみで」と書いていても、詳細を伝える必要があったり、後日直接話した方が良い場合は、改めて連絡しましょう。

取り急ぎの意味を正しく理解してマナーにあったメールを送ろう

「取り急ぎ」の意味や使い方は正しく理解できましたか。メールは、受け取る相手の顔が見えないため、「取り急ぎ」の使い方次第では、相手に失礼な印象を与えてしまいます。

「取り急ぎ」を使うときには、一方的で雑なメールにならないように、丁寧な文を心がけ、相手を思いやる必要があります。使う場面や使う相手、使う頻度に注意して、マナーに合ったメールを送りましょう。