世の中にカウンセラーの資格は数多く存在しますが、その中でも以下の2つはそれなりの知名度があります。
・産業カウンセラー
・キャリアコンサルタント(キャリアカウンセラー)
『臨床心理士』や『公認心理士』ほど取得までにお金と時間がかからず、それでいて知名度も高いのがこれらの資格です。
カウンセラーとして仕事をしたい人にとっては、まさにうってつけの資格と言えるでしょう。
ただ、費用は決して安くないので、どちらの資格取得を目指すべきか悩む人は少なくありません。
また、一部の人を除いては受験するための要件に「養成講座の修了」が定められており、それなりの時間も必要となることが、より悩ませる原因となっています。
そこで本記事では、両方の養成講座を実際に受講し資格を取得した僕が、それぞれの違いと実態を以下の項目に分けて比較してみました。
・講座参加者
・講師
・講座内容
・講座の雰囲気
全て個人的な主観での比較となりますが、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
講座参加者
養成講座を受講する上で、どんな人達と学ぶことになるかは、非常に重要な点です。
どちらの講座も、カウンセリングのRP(ロールプレイング)を実施することになるので、必ず受講者の誰かと組むことになります。
また、受講者全員とディスカッションする場面も多々あるので、交流せざるを得ません。
そのため、自分が苦手なタイプの人が多いと、続けるのが億劫になってしまいます。
参加者個人に焦点を当てると「その人による」となってしまい参考にならないので、ここでは参加者全体の傾向を比較していきます。
字面だけで見ると、産業カウンセラー養成講座の方が悪い印象を受けるかもしれませんが、そうではありません。
産業カウンセラーはキャリアコンサルタントよりも、クライアントの悩みが過去と現在に関してのものであることが多いです。
悩みへのアプローチは『マイナス→ゼロ』にもっていけるようにすることが多く、カウンセラーとクライアント双方の心の負担が大きいのは、産業カウンセラーの方かもしれません。
一方でキャリアコンサルタントは、カウンセリング理論の根幹は産業カウンセラーと同じですが、「キャリア」というだけあって悩みが現在から未来に関してのものが多いです。
そのため、キャリアを通しての今後の展望を見ていくことが多く、産業カウンセラーとはやや異なるエネルギーが必要です。
講師
講師に関しても、「個々人により異なる」というのは前提となります。
その上で比較していくと、キャリアコンサルタント養成講座の講師の方が、雰囲気が明るくハキハキしている感じがしました。
産業カウンセラー養成講座の講師は、落ち着いておりゆっくりとした口調で、穏やかな雰囲気が出ていました。
講師との相性は勉強の意欲だけでなく、自分の講座中の成績にも関わってくると思います。
産業カウンセラー試験における実技科目は、講座での成績が優秀と判断されると免除となることもあるので、この点は事前に認識しておきましょう。
実技能力評価制度
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
当講座の面接の体験学習で一定の成績に達した場合、その結果を産業カウンセラー試験の実技試験合格に相当させることができます(別途手続きが必要となります)。産業カウンセラーの資格認定について、限られた時間の試験だけで能力や適性を評価するのではなく、研修プロセスを重視した判定を行うための制度です。
講師が誰になるかは受講者に事前に知らされませんし、運次第となってしまっていますが、もしどうしても苦手意識を感じたり相性が悪いと思うなら、講座の運営元へ相談することをおすすめします。
どのような対応がされるかは運営元に委ねられますが、ぶっちゃけ向こうも商売なので、お客さんである受講者から相談があった以上は何らかのことはしてくれるはずです。
講座内容
講座内容は、両者とも全体的なスタイルは大差ありません。
どちらであっても、前半は座学、後半は実技演習を行うことになります。
詳しい内容は正直おぼろげなのですが、座学ではカウンセリングの理論、カウンセリングの歴史や変遷について学んでいきます。
講座中には何度かミニテストのようなものがあって、ここで点数が悪いとマズかった記憶があるので、寝そうになるかもしれませんがしっかり受けておかなければなりません。
実技演習では、基本的には受講者同士で2人ペア(受講者数によっては3人ペア)となって、カウンセラー役とクライアント役になり、カウンセリングのRPを行っていきます。
受講者2名によるRPを受講者全員で見学し、このカウンセリングがどうだったかについてディスカッションしたりもしますが、後半は1日通してRPをやり続けることもザラなので、精神的消耗はかなり激しいです。
特に産業カウンセラー講座の実技演習は、前述の通り「マイナス→ゼロ」にするカウンセリングを想定しているからか、心がつらくなり泣いてしまう人もいました。
以上のことから、おそらく大半の人にとってどちらの講座も、正念場は実技演習になると思います。
講座の雰囲気
講座の雰囲気は、講師と受講者全員で作られるものです。
そのため、その講座を担当する講師と、参加する受講者がどんな人達かにより左右されます。
僕が受講した講座は、それぞれ以下のような雰囲気でした。
どちらが良いというわけではありませんし、合う・合わないはその人次第でしょう。
結局どっちの方がいい?
産業カウンセラー養成講座とキャリアコンサルタント養成講座。
どちらの方がいいかは、講座の良し悪しという観点から見ると、「人による」という回答に尽きます。
強いて言うなら、
産業カウンセラー養成講座
→クライアントの心理に深く関わり、悩み苦しむ人に寄り添い支援したい
キャリアコンサルタント養成講座
→クライアントのキャリア(経験や可能性など)に関わり、今後の展望に寄り添い支援したい
でしょうか。
これが正しい表現とは思っていませんが、両方の養成講座を受講して僕が感じた印象はこんな感じでした。
ただ、どちらにしても人間の悩みと真正面から向き合い関わっていくので、これにかかるエネルギー量は相当なものです。
「資格をサクッと取得して仕事したい!」などと考えているなら、1度立ち止まって考え直すことをおすすめします。
少なくとも片手間や、生半可な覚悟で受講を終えられるものではありません。
僕は産業カウンセラー養成講座は仕事をしつつ週1で通い、キャリアコンサルタント養成講座も仕事をしながら週2回通っていましたが、正直途中で心が折れそうになることが何度かありました。
やり遂げるというモチベーションを保てないと、おそらく最後までいけないと思います。
最後に少し厳しいことを言いましたが、養成講座を受講し多くの人達と関わったことで、学びや気付きがたくさん得られました。
どちらを受講すべきか、存分に考えて選択してもらえればと思います。