自尊心と自己肯定感は似ているようで少し意味の違う言葉です。

しかし自尊心であれ、自己肯定感であれ、どちらも低い状態であっては心の健康によくありません。今回は自尊心と自己肯定感の違いや自己肯定感が低い原因を紹介し、それらを高める方法もあわせて解説していきます。

自尊心と自己肯定感の意味と違いとは

自尊心と自己肯定感は、会話の中で似た用途で使われ混同されがちですが、その意味には少し違いがあります。

ここでは、自尊心と自己肯定感の違いを確認していきましょう。

「自尊心」の意味とは

「自尊心」とは、自分の実績や周りからの評価に関係なく、自分を価値ある存在だと思う心理を表す言葉です。

似た言葉である「プライド」は、これに加え実績・地位・他者評価など外的な要因を根拠に、自分の価値を高く評価することを言います。

「自尊心」は「プライド」と混同されて使われていることが多くあり、その使用法が一般化しているので、プライドとほぼ同義であると考えて問題無いでしょう。

「自己肯定感」の意味とは

「自己肯定感」とは、今の自分の状態がどうであれ、自分を自分と認め、肯定的に評価する気持ちのことを言います。

自己肯定感が高い状態では、「良い状態だから素晴らしい」「悪い状態だから駄目である」という考えにはなりません。

どのような状況であっても、積極的に自分を好意的に認めていく感情が自己肯定感なのです。

2つの言葉の違いとは

自尊心をプライドと同義であると仮定した場合、「自尊心」は特定条件において自分を認める心理、「自己肯定感」は無条件に自分を認める心理であると言えます。

とは言え、英語ではどちらも「self-esteem」と表記され、ほぼ同じ意味で使われているので、どちらを使ったから間違いということはありません。

あえて使い分けるのであれば、「自信」や「確信」を伴う文脈では「自尊心」を、内面的に自分を評価する文脈では「自己肯定感」を使うとしっくりくるでしょう。

小見出しで自尊心や自己肯定感が低い原因とは

自尊心や自己肯定感が最初から低いという人は少なく、ほとんどが社会生活の中で徐々に低くなっていきます。

人が自尊心や自己肯定感を低くしてしまう、また低い原因は何なのでしょうか。

ここでは、自尊心や自己肯定感が低い原因を紹介していきます。

コンプレックスを持っている

体型・見た目・性格など人との違いは、素晴らしい人としての個性です。

しかしその個性も、自分で好意的に認められなかったり、他者から否定的な評価をされたりすると苦しみとなってしまいます。

「自分は駄目だ」「醜い」「劣っている」という感情が、自尊心や自己肯定感の低い原因となってしまうのです。

あまり成功体験がない

今までに自分で「成功した」と思える経験が少なかったり、成果を出しても認められる機会が少ないと、自尊心や自己肯定感は低くなってしまいます。

特に幼少期に、褒め方が分からない親や、理想が高すぎて少しのことでは褒めてくれない親に育てられると、自分を認めるという感情が上手く育ちません。

結果として、自分で自分を評価することが難しくなるのです。

過去の大失恋

恋愛はお互いのことを想えば想うほど、心に深いつながりができます。

自分の価値や存在意義を、全て相手に委ねてしまうこともあるでしょう。

そのような状態で失恋をすると、人は自分の全てが否定されたような気持ちになり、自尊心や自己肯定感が極度に下がってしまいます。

場合によっては、「自分は無価値な人間だ」という思考に囚われ抜け出せなくなることもあるでしょう。

自尊心も自己肯定感も大切にすべき理由とは

自尊心や自己肯定感が低い状態では、本当の自分を出すことが難しくなります。

人に気をつかい、我慢をして、自分を否定し、目立たずに生活していく生活は、幸せなものとは言えないでしょう。

ここでは、自尊心や自己肯定感を大切にすべき理由を紹介します。

自分にネガティブだと全てに自信が無くなるから

「自分なんて」という思いが強すぎると、何かに挑戦することや、新たな人と出会うことをためらうようになるでしょう。

消極的で慎重な態度は、初めのうちは周囲から「思慮深い人だ」と思われますが、徐々に単なる「扱いづらい人」へと印象が変わってしまいます。

更にネガティブな思考も相まって、徐々に周囲から人は離れていくでしょう。

結果として、仕事・恋愛・近所づきあいなど、生活のあらゆる場面が過ごしづらくなります。

「もの」への依存度が高くなる

自尊心や自己肯定感が低い人は、無形、有形問わず、何かを手に入れることによって自分を保とうとする傾向にあります。

地位のある人に付き従い「その人に従っている自分は価値がある」と思ったり、魅力的な恋人と付き合い「魅力的な自分」だと信じ込むのです。

また他にも、課金すれば簡単に成果の出るスマホゲームに大量に課金したり、ブランド品を身につけることによって、見せかけの自己評価を高めようとします。

それでも満たされない場合は、酒・たばこ・ギャンブルなど刹那的に快楽が得られるものに依存し、心の苦しさを誤魔化そうとするのです。

ものごとのマイナス面ばかりに気付く

自尊心や自己肯定感が低いと、自他問わず、マイナスの面を探すようになります。

自分への評価が低い人は、自分の評価を相対的に上げようという気持ちが働き、人の揚げ足を取ったり、マイナス面ばかりを目ざとく見つけるようになるでしょう。

また、ものごとの失敗の可能性や、リスクを過大に評価し、挑戦するということをしなくなります。

最終的には、自分にも他人にも、社会にさえポジティブな考えを持つことができなくなり、絶望的な心理状態になってしまうでしょう。

自尊心や自己肯定感を確実に高めるための方法

自尊心や自己肯定感が低い状態では、心理状態や実際の生活に対して、あまり良い影響がありあません。

むしろ生きづらく感じることがほとんどでしょう。

一方で、自尊心や自己肯定感が高ければ、ものごとをポジティブに考えることができるようになり、色んなことに積極的に挑戦できるようになるのです。

ここでは自尊心や自己肯定感を高める方法を紹介しますので、自分に合う方法を試し、ポジティブな気持ちを手に入れましょう。

言葉の選び方を変える

普段使う言葉を変えるだけでも、自尊心や自己肯定感を高めることができます。

脳は、頭で考えたり実際に発せられた言葉が、「現実か空想か」「自分に対してか他人に対してか」を判断しません。

出てきた言葉を素直に脳にインプットしてしまうのです。

そのため、日常的に否定的な評価をし批判的な言葉を発し続けると、徐々に自己評価は下がってしまいます。

否定的な言葉が出そうなときは、それがポジティブな言葉に変換できないか、一度考えてから発するようにしましょう。

例えば「飽き性」は「切り替えが早い」、「失敗」は「成長するための経験」などと言い替えると、ポジティブになります。

小さな成功を沢山経験する

普段から自己評価の低い人が、考え方や行動を変えただけですぐに自尊心や自己肯定感を高めることは難しいでしょう。

そこで、自尊心や自己肯定感を確実に高める方法として「成功体験を積み重ねる」のがおすすめです。

「成功体験」とは言え、それは誰もが認める大きな成功である必要はありません。

「本を5ページ読んだ」「すぐに食器を洗った」など、本当に小さなもので良いのです。

そして、きちんとできたときには、自分自身を「すごいね、さすが」と盛大に褒めてあげましょう。

これを続けることによって、自分の行動にポジティブな評価を下す癖をつけることができます。

人から褒められる環境作り

言葉や行動を変えても、周囲にあなたを頻繁に批判する人がいては、自尊心や自己肯定感を高めることができません。

否定的な言葉を使う人、批判ばかりする人と一緒にいると、逆に自分の評価を下げてしまうことになります。

とは言え、批判的な人が家庭や職場にいる場合は逃げ出すことは容易ではないでしょう。

対策としては、できるだけ距離を取るしかありません。

一方で、自分の味方となる「褒めてくれる人」を身近に置くのは、自尊心や自己肯定感を高める方法として有効です。

もし、今そのような人が周りにいないのであれば、信用できる人にその役を買ってもらい、定期的に褒めてもらうようにすると良いでしょう。

自尊心を失わないための3つの考え方

自尊心はいくら高めても、少しのきっかけで大きく失ってしまうことがあります。

一度自尊心を失うと、元通りの心理状態に回復するにはかなりの時間を要するでしょう。

ここでは、自尊心を失わないための考え方を紹介します。

自尊心を失ってしまわないように、これらの考え方を、常に心の隅に留めておくようにしましょう。

自分の失敗に恐れを抱かないこと

失敗に恐れを抱く必要はありません。

どのような失敗でも、全ては成長するための経験となるのです。

多くの失敗の積み重ねは「これだけの経験をしてきた」という確固たる自信にもつながります。

失敗は恐れるものではなく、むしろ自尊心を高める方法の一つとも言えるのです。

自分を受け入れる

恐らく多くの人が自尊心を失うきっかけは、社会的な理由か、他者との比較した結果でしょう。

例えば、失業したときに「社会的には働いていることが当然だから働ないていない自分は無価値」と思うかもしれません。

しかし実際のところ、あなた自身の価値や人間性は全く変わっておらず、変わったのは環境だけです。

何が変わろうとも「自分は自分」であり、社会や他者があなたをどう評価しようと関係ありません。

自尊心が揺らいだときは、ありのままの自分を受け入れ「自分はこのままでいいんだ」と強く念じましょう。

自分が自分を認めていれば、他者の評価はどうでも良くなるはずです。

違いを認める

他人に対して差別的な態度を取る人ほど、他者との違いに敏感です。

そのため、自分の認められない違いに対して攻撃的になってしまうこともあるでしょう。

その攻撃性は自身にも向けられます。

一般的でないこと、認められているコミュニティにいないことが自己否定のきっかけとなってしまうのです。

多様性を認め、人に寛大になることで、自然と自身への否定的な気持ちも和らいでいきます。

「違いを認める」簡単なようで、難しいことですが自尊心を持ち続けるためには重要な考え方です。

自尊心や自己肯定感は絶対に大事にすべき

自尊心や自己肯定感が低い状態が続いている状態は、とてもではありませんが幸せな人生を歩んでいるとは言えません。

「自分で自分を認めることができる」根本的ですが、これほど素晴らしい心理状態は無いでしょう。

突き抜けて自尊心や自己肯定感を高める必要はありません。

せめて、無意味に自分を責めてしまうことのないように、一定の自尊心や自己肯定感の高さは維持するようにするのが良いでしょう。

自分で自分を認められない気持ちは辛いものです。

適度に自尊心や自己肯定感を高め、自分を大事にして生きていきましょう。