「石の上にも3年という言葉があります。1つの仕事はとりあえず3年続けられるように頑張ってください。」
この言葉は、以前僕が勤めていたとある会社の社長が、新入社員に向けて言ったことです。
昔から日本ではこの「とりあえず3年続けろ」という言葉がいたるところで使われています。
どんなに辛くても3年続ければ見えてくるもの・得られるものがあると、社会人であれば誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし、実際に1つの仕事を3年以上続けた経験のある筆者からすると、この『とりあえず3年』は何の根拠もないデタラメだと断言できます。
この記事では、未だ日本社会に存在する『とりあえず3年』を実践した経験から得たことについて、説明していきます。
今の仕事を3年続けるべきか悩んでいる方の参考になれば幸いです。
『とりあえず3年』と言われる理由
そもそも、なぜしきりにこのような『とりあえず3年』という言葉が使われているのか。
筆者の経験を踏まえると、こうした主張をしてくる人達の主な言い分は、以下の通り。
転職する際に不利になる
1つの仕事に就いたら3年は続けていないと、転職が難しくなるという説があります。
会社は長く働いてくれる人材を求めるので、3年未満で辞めてしまっている職歴のある人物だと、自分達の会社でも同様にすぐ辞められてしまうかもしれないと思われ、採用されないというのです。
また、3年未満で辞める場合、その理由もネガティブなもの(仕事が楽しくない、等)であることが多く、「そうした後ろ向きな気持ちで辞めても、次に行けるところはな。」とも言われます。
転職経験がない方からすると、このような言葉は不安を煽られ、「3年続けないとダメなのかな・・・」という気持ちに陥りやすいでしょう。
実際に転職活動をしてみないと分からないということもあって、反論・反証がすぐできないのも含め、絶妙なところを突いています。
逃げ癖がつく
転職が当たり前の時代になって久しいですが、未だに日本では『1つの会社に長く勤めること』を美徳とする風潮が存在します。
特に年代が上の人であればあるほどこの意識が強い場合が多く、「ここで逃げたら、また同じような状況になった時に逃げることになるよ。」などと言われます。
筆者も入社して8か月で会社を辞めようとした際、上司から「あんた逃げ癖つくよ。男らしくないね。」と言われた経験があります。
実際のところ逃げようとしているのは事実なので、これも反論が難しいのがミソです。
忍耐力が足りないダメな奴と認識される
日本は『辛くても我慢する』という忍耐力が強い人を好む傾向にあります。
特に昔は『気合い』と『根性』こそ欠かせないものであるとされ、これがない人は成功しないとも言われることがありました。
3年未満で辞める場合、忍耐力が足りないとして、ダメな奴扱いされることがあります。
そして、「そんなんじゃどこに行っても通用しないぞ」というこ言葉に繋がることが非常に多いです。
「俺(私)の時代は~」という経験談
会社の飲み会で、先輩や上司から「俺(私)の時代は~」などという話をされた経験はありませんでしょうか。
こうした人達はしきりに『昔と今』を比べたがり、大抵の場合「今の若い連中は楽でいいよな。」なんて発言をしてきます。
つまり、「自分の時代はこんなに甘くなくて、もっと厳しかった。」とか、「今は昔よりずっと恵まれている」などという主張で、その環境ですら乗り越えられないのは話にならないくらいに言われるのです。
昔と今の環境を比べることに何の意味があるのかは全く分かりませんが、とにかくそうした自らの経験談から、3年未満で辞めようとする若手に喝を入れてくるのです。
3年続けてみて良かったこと
筆者が実際にと1つの仕事を『とりあえず3年』続けてみた結果ですが、以下の点は良かったと感じました。
仕事の力の抜き方が分かった
3年も仕事を続けていると、自分がどの程度頑張ればどれくらいの成果が出るのかが推測できるようになります。
それと同時に、どれくらいやらないと上司から目を付けられるかも分かるようになるので、自分があまり疲れないように適度なレベルで仕事に取り組めるようになりました。
どの仕事にも共通することですが、仕事に対して全力投球している人は、実はほとんどいません。
大抵はバレないように、手を抜いたりサボったりしています。
「バレなければ無いのと一緒」というのは少々乱暴かもしれませんが、これができると変に自分を追い込まずに済みますし、社内でも上手く立ち回れるようになります。
管理職の辛さと大変さが分かった
3年仕事を続けていく中で、一時期管理職としての業務も経験しました。
自分自身の仕事はもちろん、部下のフォローや進捗状況の把握、業務評価などやらなければならないことは多岐に渡り、その都度判断に悩むことも。
管理職は責任の重さが一般社員の比ではありません。
社内での就業年数が長くなればなるほど、こうした責任のある役職につく可能性も高くなるため、出世のチャンスとも取れます。
また、自分が管理職につかなくても、3年もいると管理職に頼られることが増えてきます。
そこで管理職がどんな状態になっているかが見えてくるため、大変さに気付くことができます。
会社内のパワーバランスを知れる
会社を形作っているのは人です。
そしてどんな職場であれ、人間が集まる場である以上、そこにはパワーバランスが生まれます。
同じ会社に3年もいると、そうした関係性もたくさん見えるようになり、常に新しい情報が入ってくるようになります。
表向きでは見えない人間模様が日々生まれているのが分かり、ゾッとするのと同時に面白くもあります。
それも短期間で辞めると分からない、人間の本性を垣間見ることができる場面です。
3年続けてみて後悔したこと
逆に『とりあえず3年』続けて分かった、後悔したことは以下の3つです。
身に付くスキルは限定される
「3年やれば1人前」なんて言われますが、あれは全くの嘘だと断言できます。
たとえ何年やろうが分からないことはありますし、そもそも1人前の定義が曖昧なので、3年やったからといって必ずしも1人前ではありません。
また、同じ会社で仕事をし続けていると、身に付けられるスキルは狭いものになります。
部署異動があれば変わってきますが、それでも会社自体は変わらないため、慣れと同時に飽きてきます
辞めたい気持ちは変わらない
3年やれば仕事が楽しくなってくると言われますが、これも嘘です。
むしろ振られる仕事と責任が増えてより大変になり、ますます辞めたくなります。
職場に3年以上いる先輩に聞いても、辞めたいと思っている人は多かったので、これは個人的な感覚ではないことがお分かりいただけるかと思います。
もし「3年続ければ楽しくなるかも・・・」と考えている方は、残念ながらあまり期待は抱かない方がいいでしょう。
社内環境が良くなることはない
今の会社の環境が自分に合わなかったり、不満を感じることが多い場合は、今すぐ辞めることをおすすめします。
というのも、その感じは3年我慢しても変わることはないからです。
会社の空気は、ベンチャーなどの新興企業でない限り、長い年月をかけて作りこまれたものです。
それが3年などわずかな時間で変わることはほぼ考えられませんし、自分が環境に順応したり不満がなくなることもないでしょう。
時折、「もう少し頑張れば良くなる」などと励ましてくる先輩や上司がいますが、残念ながらそれはほぼ嘘と思って間違いありません。
3年続けても転職活動は苦労する
3年我慢しなければならないという不安を助長させる最大の要因は、『とりあえず3年続けないと転職に響く』という点だと思います。
これについてハッキリ申し上げますが、たとえ3年以上やっても、転職は大変ということに変わりはありません。
もちろん1日とか1週間という超短期離職であれば話は変わってきますが、そうでなければ会社を辞めるという事実は同じなので、どのみち面接でも質問されることはそこまで相違ないのです。
これは実際に筆者も経験済みなので、自信を持って言えます。
なので、よく考えた上で今の会社に見切りをつけるという結論に落ち着いたのであれば、3年という時間は気にせず辞めて問題ないです。
3年我慢はするのはとても辛い
『とりあえず3年』の弊害は、辛いことを無理にでも我慢しなければならないことです。
辛いと感じる仕事をしている時間はとても長く感じるので、これを3年やるのは心身に大変な負担がかかります。
昨今問題になっているうつ病や適応障害などは、まさにこうしたところから生まれるのだと思います。
無理に頑張った結果こうした病気にかかってしまったら、回復するまでには多くの時間が必要になります。
自分の健康より大事な仕事など、この世の中にはありません。
ぜひ自分を大切にしてあげてほしいです。
『とりあえず3年』続けるよりキャリアプランの構築が大事
自分が辛いと感じる仕事を無理に続けるのは、間違っても良い選択とは言えません。
それよりも、自分が将来どうなりたいのか、そのためにどうしていくのが良いかという、キャリアプランを構築する方が遥かに大事です。
仕事はたくさんありますし、自分に合う働き方は千差万別です。
今の仕事が辛いとか、続けるか辞めるか悩んでいる方は、まずキャリアプランを構築してみることをおすすめします。
自力で行うのが難しい方は、『キャリアアップコーチング』のサービスを利用して、プロのサポートを受けながら構築してみましょう。
「自分はどうしたいのか」という気持ちを最優先にすべき
以上を踏まえた上で、僕が声を大にして言いたいのは、自分の人生なんだから自分がどうしたいかを最優先にしていい!ということです。
会社はこの世にごまんとありますし、3年という時間は人生全体を見れば短いかもしれませんが、若いうちはとても貴重な期間です。
その大切な時間を、根拠のない不安を抱えて嫌々ながら仕事を続けるのは、非常にもったいないこと。
1度しかない人生なのですから、自分のしたいようにすればOKです。
特にこの日本で、困窮の末に飢え死にするということは滅多にありません。
自分が楽しく幸せに生活できることを考えて、力を注いでいきましょう。