会社には様々な人材が集まります。

仕事が早く優秀な社員もいれば、仕事ができない(正直言って使えない)社員もいるでしょう。

部下を受け持つ上司からすると、仕事ができない部下というのは大変な悩みの種であるはずです。

この記事では、そんな仕事のできない部下を上司はどう育てていくべきか、詳しく解説していきます。

仕事ができない部下がいるのは上司のせいではない

まず1点勘違いしてはいけないのは、仕事ができない部下がいるのは、決して上司の責任ではないということです。

考えてみてほしいのですが、仕事ができない部下は上司が受け持ってからそうなったのでしょうか?・・・そんなことはないはずです。

上司が受け持つ前、もっと言うなら研修段階などでその片鱗もしくは全容は見えていたと思います。

仮に上司が担当することになった後からそんな状態になったのであれば、上司の責任である可能性があります。しかし、そうでなければその部下の能力が元々低いことが原因です。

だから、上司がそこに責任を感じたり落ち込んだりする必要は、全くありません。

『なぜ仕事ができないのか』を分析する

一言で「仕事ができない」と言っても、深掘りしていくといくつかのタイプに分けられます。

このタイプによってアプローチの仕方も変わってくるため、最初はここをしっかり分析する必要があります。

具体的には、主に以下のようなタイプに別れます。

自分の感情を優先する部下

仕事に真面目な方には信じられないかもしれませんが、世の中には社会人として給料を貰っている立場にも関わらず、その自覚がない人間が存在します。

例えば何らかの命令があったとすると、社会人の対応としては個人的に沸き上がった感情があったとしても、それを一旦脇に置いて従うか、どう考えてもおかしいと感じればその理由を論理的に組み立てて異議を申し立てることです。

しかし、彼等は自分が納得できないこと(自分の意に沿わないこと)があると、その感情をそのまま打ち返してきます。

これは人間としては自然な行動かもしれませんが、社会人としては有り得ない行動です。

彼等自身がそれを自覚している場合もありますが、それでも止まらずに突き進んでしまうため、仕事ができない存在と認識されます。

要領が悪く不器用な部下

要領が悪いのも不器用なのも、人間の個性としては全くおかしくありませんし、むしろ愛される要素になり得ます。

しかし、これが仕事で自分の部下となると、話は変わってきます。

このタイプの人間はマルチタスクができません。そのため1つのことをやっている時に別の仕事が降ってきても、忘れてしまうかどっちつかずで中途半端にしか進められません。

また、他人があえて触れていなかった部分(濁しておいた方が良い部分)に思いきり触れてしまい、自分も周囲も苦しめる展開を生み出してしまい反感を買います。

自分のする行動でどのような結果を招くかなど、先読みができないのです。

優先順位が付けられない部下

いくつかのタスクがある時、大切なことは最初に優先順位を付けることです。

どれも仕事であることは間違いなくても、その中には必ず最優先でやるべきこと~手すきの際にやっておけばいいことまで別れているはず。

優秀な部下はこれを自然と行っていますが、できない部下はこれが壊滅的に下手で、納期を過ぎてしまうことが多々あります。

なので上層部から目をつけられやすく、上司も管理不足の責任を問われ被害の余波を受けやすいです。

言われたことしかやらない部下

社会人として大切なことは、上司から命令された仕事をきっちりこなすだけに留まらず、+αで求められていることをすることです。

しかし、中には命令されたことしかしない部下がおり、モヤモヤさせられる要因になります。

彼等は決してできないわけではなく、給料が変わらないのであれば最低限のことだけしかやらないという、断固たる意思を持っています。

そうした振る舞いを一切疑問に思わず、正真正銘自分のことだけを考えているのがこのタイプの部下なのです。

仕事ができない部下の育て方

仕事ができないタイプを分析できたら、いよいよどのように育てるべきかを検討する段階です。

このアプローチ方法に絶対的な正解はありませんが、1つの参考としていただければ幸いです。

自分の感情を優先する部下

このタイプへ接する際には、必ず守るべきことが1つあります。

それは「何があっても否定はしない」ということ。

彼等はどんな時も感情を優先させ、それが悪いことという自覚はありません。

そのため、それが社会人として良くないことだなどと正論を持ち出しても、なぜ感情を優先させてはいけないかを理論的に説明しても、全く通じず改善しません。

むしろ、より意固地になって信頼度を落とすだけです。

そこでまずすべきことは、彼等の主義・主張に対して「うんうん、分かるよ」と寄り添い理解を示すことです。

この主義・主張がどれだけ自分勝手でバカらしく思えても、それは脇に置いておきましょう。

その上で、現状はどうしてもその主義・主張に沿ってあげられないこと、ただ個人的には言っていることもよく分かるので、可能な限り力になることを説明しましょう。

こうすることで、感情を優先して行動する彼等の信頼を獲得し、こちらの言うことにある程度は従ってもらえるようにしておくのです。

彼等は自分を理解し庇ってくれる人を目ざとく探しているので、そこに潜り込めばコントロールしやすくなります。

要領が悪く不器用な部下

このタイプの部下には、「もっと視野を広く持って仕事して」や「もうちょっと落ち着いて対応しようか」など、抽象的な指導や注意では意味がありません。

それができるのであればとっくにやっていますし、できないから今の状態になっているのです。

彼等にとって、こちらが自然とできることは、どう頑張ってもできないほど難しいのです。

そのため、具体的な方法(必ず今日やることを付箋に書いて、見える位置に常に貼っておいて、あらかじめ決まった時間に時計のアラームを設定しておいて鳴ったら確認する等)を共有し、それで改善するかを試していくことが必要です。

間違っても「何でできないの?」とか「そんなに難しいこと?」なんて問い詰めてはいけません。

それには何の意味もないどころか、彼等からの信頼をなくすだけです。

優先順位が付けられない部下

このタイプの部下は、そもそも優先順位の判断ができないパターンがほとんどです。

そのため、まずは彼等の中にある優先順位の付け方がどうなっているのかを確認しましょう。

例題を設定して判断させてみると手っ取り早く分かります。おそらく、かなり感覚にズレがあると思います。

それを確認したら、優先順位の判断基準(どういった内容をより優先させる必要があるか)を1つずつ共有していきます。

彼等の感覚はいきなり修正しようとしても難しいので、判断基準を共有後も具体的な案件にどんな順位を付けているかは、その都度確認することをおすすめします。

言われたことしかやらない部下

このタイプの部下には、はじめにやってほしいことを全て伝えておきましょう。

彼等は能力自体は高いことが多いのですが、目立ちすぎて変な仕事を振られないようにあえて遅くやったり、自分のやるべきことが全て終わっても上司に他の仕事があるか確認したりはしません。

そのため、「これが今日あなたがやるべきことです」というミッションとして渡すことが重要です。

基本的に彼等は仕事に責任は持っていることが多いので、自分がやるべきこと(やらないと怒られること)はちゃんとやってくれます。

逆に言うと、やらなくても何も言われないことはとことんやらないので、上司として威厳を持ったコントロールが欠かせません。

自分の常識は通用しないと思って接する

どのタイプの部下であっても共通する接し方は、『自分の常識は通用しない』という前提を持っておくことです。

彼等は社会人として本来持っているべき意識やしきたりなどは、『バカらしい』としか思っていません。

思っているだけならまだいいのですが、実際にそれを態度や行動に出してしまいます。
※特に自分の感情を優先するタイプはその傾向顕著です。

そんな人間にどれだけ額面通りの言葉を厳しく並べ立てても、自分の心身を摩耗するだけで暖簾に腕押しです。

大事なことは、一旦自分の常識を全て脇に置いて、彼等の言葉に耳を傾けること。

彼等には彼等なりの気持ちがあるので、そこにこちらが近付く努力をしない限り、改善は見込めません。

それどころか、無闇な締め付けはパワハラと捉えられ、こちらがリスクに晒されます。

そうした最悪の展開に陥らないために、現代を生きる彼等を理解しようとするところから始めましょう。

最終手段は自分が逃げること

「何でそんな連中のためにこっちがここまで頑張らないといけないんだ・・・」

ここまでお読みいただいて、そう思った方もいるかもしれません。

もし自分にはそこまでできない!・・・という場合は、そこから脱出する準備をすることをおすすめします。

どれだけ文句を言っても彼等が変わることはありませんし、上司側の苦労や心情も気にしてなどいません。

上司である以上、そうした人間の管理も仕事ですが、やはり納得できない部分もあるかと思います。

どうしてもその気持ちが拭えないのであれば、自分がそこから逃げることを検討しましょう。

上層部にぶちまけることで状況が好転するかもしれませんし、もししなかったら転職などを考えてもいいでしょう。

上司だからといって、全てを抱え込んで頑張り続ける必要はありません。

上司だって感情を持った人間ですので、そうしたことがあってもいいのです。

繰り返しますが、仕事ができない部下がいるのは上司の責任ではありません。

そのことを忘れずに、取り組んでいただければと思います。