マインドフルネスを生活に取り入れることで、集中力の向上やストレス解消などビジネスシーンにも役立つ効果が期待できます。
マインドフルネスと瞑想の違いから、脳に与える影響など基礎知識を紹介するので参考にしてみてください。
マインドフルネスと瞑想の意味や違いは?
まずは、間違えやすいマインドフルネスと瞑想の意味や違いをチェックしてみましょう。どちらにも複数の定義があり、密接に関係しているからこそ間違えやすいものです。わかりやすく説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、『今を認識すること』です。どのタイミングでも、今を認識することで物事への考え方が変わっていきます。
この心の持ち方は何事にも適用でき、マインドフルネスを『会話』に適用すれば、相手との会話を今まで以上に注意をして聴き取ることができるのです。これはあくまで例えですが、このことからマインドフルネスとは『今を認識する』という考え方と言えます。
瞑想とは
では瞑想とはどのようなものなのでしょうか。
瞑想は『根本的に自分のために何かをする時間を意図的に設けるもの』です。故意に自身へ有益なことをしていることが瞑想なので、さまざまな種類があります。
例えば、リラックスするための音楽瞑想、宇宙への祈りを捧げる瞑想、頭をすっきりさせるためにする瞑想があります。これらは全て『根本的に自身のために何かをする時間を意図的に設けている』という定義で行われているので瞑想です。
ではここでマインドフルネスを適用して瞑想をしたらどうなるのでしょうか。ここが混合してしまうポイントです。次は、マインドフルネス瞑想を見てみましょう。
マインドフルネス瞑想とは
マインドフルネス瞑想とは『意図的に今この瞬間にある何かに集中し、注意を払うこと』です。マインドフルネスでの『認識』と、自身のために時間を割く『意図的』な状態が『マインドフルネス瞑想』と言えます。
マインドフルネス瞑想では、雑念を捨てて今のこの瞬間に集中することを繰り返すので集中力が高まります。また、雑念にとらわれることがないのでストレス解消にも繋がり、洞察力・直感力・想像力が豊かになるとも言われているのです。
その瞬間を十分に認識するので、思慮に欠ける反射的な行動を抑制して1歩引いて自分を見つめることができたり、より踏み込んだ考えができるのがマインドフルネス瞑想です。次の項でより詳しく見ていきましょう。
マインドフルネスの脳への影響
マインドフルネスで今をより意識することにより、認識が深まるので『心が整理』されていきます。心が整理されることで、脳へも影響がありさまざまな効果を実感できると言われています。さっそくその効果をチェックしてみましょう。
コルチゾールの減少
ストレスによって腎臓の上を覆っている副腎からのコルチゾールが減少します。このコルチゾールの減少は、免疫力低下・血圧や血糖を高める・不定愁訴・認知症・うつ病・不妊の原因として考えられているものです。
マインドフルネスを行うことで『心の整理』ができるということはストレスの解消に繋がり、コルチゾールを抑制する効果が期待できるとされています。
扁桃体を落ち着かせる?
扁桃体とは、人を含む高等性追動物の側頭葉内側の奥にあるアーモンド形の神経細胞の集まりのことです。情動反応の処理と記憶において重要な役割を持ち、恐怖感・怒り・不安・悲しみなどの交感神経に関与しており、感情にも大きく影響しています。
マインドフルネスでリラックス状態を作り出すということは、扁桃体の働きを落ち着かせることができていると考えられ『感情的な気持ち』を抑える効果が期待できるとされます。
この扁桃体は、現代病とも呼ばれる『うつ病患者』によく過剰な働きが見られます。マインドフルネスで扁桃体を落ち着かせることで『将来や今に対する不安・恐怖』が消えて『気持ちが前向き』になると言われているのです。
海馬や前頭葉の活性
先述したコルチゾールは、長期分泌によって記憶をつかさどる海馬を萎縮させることがわかっています。海馬は記憶力や判断力に関わっている部分なので、萎縮によって記憶力や判断力の低下を引き起こすのです。
コルチゾールの減少によって海馬の機能を回復させることで記憶力や判断力の向上が期待できるため、ビジネスシーンでもマインドフルネスは有効的です。
また、ストレスが過度にかかっている状態では学習・計画性をつかさどる前頭葉を通らずに行動・言動が出てしまいます。『反射的・衝動的』に行動してしまうことにも繋がってしまいますが、マインドフルネスでストレスを軽減することで機能の回復が期待できるのです。
マインドフルネスが脳に与える影響は幅広く、今でも研究が続けられている分野です。今発見されている効果だけでもビジネスシーンでも活用できるものがいくつもあると言えます。
マインドフルネスの主な効果
では、マインドフルネスの主な効果は何があるのでしょうか。脳に与える影響によってさまざまな効果が期待できるので、代表的なものを紹介します。
集中力の向上
マインドフルネスを認識することで、1つのことに深く集中することができます。特に、マインドフルネス瞑想を習慣化してしまえば、集中力の向上が期待できるのです。
習慣化したことによって集中力が上がれば、作業の効率化に繋がります。マインドフルネスで扁桃体を落ち着かせることで『ストレスの軽減』にも良いことから注目されているのです。
免疫力の向上
リラックスすることによって副交感神経が優位の状態に移行していきます。身体がとてもリラックスした状態だとストレスが軽減されるので『コルチゾール』の働きが弱まるのです。
コルチゾールの活動が緩やかになることで、『免疫力の向上』や疲れが取れやすくなるなどの効果が期待できると言われています。
共感性の向上
リラックスした状態で1つのことに集中することができるため、心の広がりや繋がりをより感じることができると言われています。他の人と話すときにも、マインドフルネスの心の持ち方で『内容や心情に寄り添う』会話ができるのです。
多くのことを受け止めることができ、思いやりをもって接することで心の広がりや繋がりがより一層強く感じられるのです。人間関係を円滑にして、気持ちよく過ごすためにもマインドフルネスの心の持ち方は役立ちます。
デメリットについても知っておこう
マインドフルネス瞑想などには良い効果がたくさんあります。しかし、そこにはマインドフルネス瞑想だからこそのデメリットもあるのです。次は、デメリットについてチェックしてみましょう。
禅病とは
マインドフルネス瞑想に限らず、瞑想はする人の性格・環境などによって『禅病(ぜんびょう)』を引き起こすリスクがあります。禅病とは、いわゆる精神疾患に近いもので『自律神経失調症やノイローゼ』のようなものです。
もともと禅修行は、師匠が無理難題を弟子に与え続け精神的に追い込み、禅病の起源とも言える『精神的に追い詰められる状態』を作り上げるところから始まります。
瞑想などを繰り返していくと、哲学的なことを考えすぎて精神的に追い込まれてしまう場合があるかもしれません。そんなときは、自然に日常に取り込む形で、かつ適度に行うようにしてみましょう。
暗示にかかりやすい
瞑想中は暗示にかかりやすい状態と言われています。1人で行っている場合にはゆったりとできますが、教室などで行っている場合には『違和感があれば参加を中止』するなどの対処がおすすめです。
暗示とは簡単に解ける状態ではなく、悪い認識でも暗示によって善行と捉えればさまざまな犯罪などにも繋がる危険性があるのです。
医師の勧めたカウンセラーなどは医療行為で行っているのでそこまで疑心暗鬼になる必要はありませんが、教室などに通うときには『瞑想』をしていても真実を見極める意識を持ちましょう。
マインドフルネスのやり方
マインドフルネスのために瞑想を取り入れるにはどのような方法があるのでしょうか。基本の方法と応用の方法を紹介するので参考にしてみてください。
基本の方法
マインドフルネスを取り入れるための瞑想の基本は『調身・調息・調心』の3ステップと言われています。簡単に説明すると、姿勢・呼吸・心を整えるということです。以下は、マインドフルネス瞑想の基本方法なので参考にしてみてください。
- 背筋を伸ばして座り『姿勢』を整える
- 深呼吸を1〜3回程度行い『息』を整える
- 鼻呼吸にし、ゆっくりと呼吸をして『呼吸』を意識する
- 雑念は受け入れ、瞬間を意識するように『心』を整える
- 5〜20分程度たったらゆっくりと意識を戻す
最初は、雑念にとらわれてしまいがちですが『呼吸を意識』して続けていくことで『心』が落ち着いてくるようになります。毎日1回程度でも問題ないので、生活に支障がでない程度に続けるのがおすすめです。
歩行や食事での応用
慣れてきたら歩行や食事のときに応用をすることができます。
歩行では、歩くごとに自身の呼吸や足の裏の感覚、全身の動きを観察していきます。『左足・右足・左足』というように足の動きに集中し、足の動きに合わせて左足・右足・左足と頭の中で言葉を言いながら続けていくことで瞑想するのです。
この瞑想方法は『ウォーキングメディテーション』と呼ばれています。
ここで1番注意して欲しいのが、集中しすぎてまわりへの注意を怠ることです。大きな事故に繋がることもあるので、最初は安全な公園などで短時間だけ行うのがおすすめです。
食事では、お米の1粒まで徹底的に観察し、そこからゆっくりと舌で食感を楽しみます。食材によって食感が違うのを感じながらゆっくりと味わうことで瞑想するのです。この瞑想方法は『イーティングメディテーション』と呼ばれています。会話もTVもない環境で、食事だけに集中するのがポイントの瞑想です。
聴覚や呼吸に関する応用
他にも、聴覚での瞑想『マインドフルリスニング』や呼吸での瞑想『マインドフルネス呼吸法』などがあります。
マインドフルリスニングは、リラックスできる環境を整え『聞こえてくる音に集中』するものです。目を閉じ、呼吸を整えて『自身の呼吸の音に耳を傾ける』ことから初めます。徐々にまわりの音にも意識を傾けることで瞑想していきましょう。
次にマインドフルネス呼吸法では、4つ数えながら鼻呼吸で息をゆっくりと吸い込む、7つ数えながら息を止める、8つ数えながら口から息を吐く、を繰り返すものです。リラックス効果が高く、入眠前にもおすすめの瞑想方法と言われています。
マインドフルネスのアプリ
マインドフルネスのトレーニングを行う場合はアプリを活用してみるのがおすすめです。意識して時間を作るきっかけになるほか、瞑想の知識やタイマー、講座などさまざまな機能があるアプリを紹介します。
Head Space
『Head Space(ヘッドスペース)』は短時間の瞑想を習慣化するための機能がついたアプリです。椅子で行う瞑想がベースなので、オフィスや自宅など気軽に瞑想が初められる場所で活躍します。
音声、文章は全て英語ですが『図解』されているのでわかりやすく使い勝手が良いと人気です。さまざまなジャンルやステップの瞑想を楽しみたい人におすすめされています。
calm
『calm(カーム)』は、写真や音楽でリラックス効果が期待できるアプリです。水の流れる音・鳥の鳴き声などと一緒に表示される山や湖の画像はヒーリングにぴったりと言われています。
Meditate(瞑想)の項目に『Breathe(呼吸)・Timed Meditation(時間固定の瞑想)・Programs(テーマ連続プログラム)』があるので、マインドフルネス瞑想にも活用できます。
MYALO
『MYALO(ミャロ)』は、座禅の手法に最新の脳科学を取り入れて作られたアプリです。決められたメニューに沿ってオーソドックスな知識を積み上げていくタイプのマインドフルネストレーニングとして人気があります。
テーマをクリアすることで徐々に知識を得ながらマインドフルネスを取り入れることができるので、より詳しくなりたい人におすすめです。マインドフルネスを測定する機能もあるので効果の実感が目に見えるのもポイントとなっています。
マインドフルネスストレス低減法について
マインドフルネスストレス低減法はアメリカの博士によって開発された『マインドフルネス』を認識することでストレスを軽減する方法です。さっそく内容をチェックしてみましょう。
MBSRとは
MBSRとは『Mindfulness-Based Stress Reduction』の略で、マインドフルネスストレス低減法のことを言います。これはテーラワーダ仏教の瞑想方法を基本にし、さまざまな仏教やヨガの実践方法を取り入れることで完成した方法です。
数々のテストが行われ、この方法は疼痛などの身体的なストレスだけではなく、精神的なストレスに対しても効果的と言われています。
カリキュラムの内容
マインドフルネスストレス低減法で行われているカリキュラムの1例を紹介します。
あるプログラムは、グループ学習のクラス参加と自宅練習が必須となり、期間は『8週間』で組み立てられています。
グループ学習では、8週間のうち週1回の2〜3時間のクラスに参加、第6週と7週の間に朝から夕方までの全日クラスへの参加が必要です。『ボディスキャン・マインドフルネスヨガ・食べる瞑想・座る瞑想・歩く瞑想』がグループ学習に取り入れられています。
自宅での練習は、毎日1時間に公式な練習を行うこととなっています。また、日常生活でのマインドフルネスを実戦することが求められるようです。
プログラムの効果とエビデンス
プログラムに参加することで、身体感覚・集中力の向上、身体的苦痛・精神的苦痛の対処法の取得、自分自身をいたわることができるようになる効果が期待できます。
エビデンス(根拠)として、多くの臨床試験により『不安障害・喘息・がん・慢性疼痛・糖尿病・繊維筋痛症・胃腸障害・心臓病・HIV・ホットフラッシュ・高血圧・うつ病・気分障害・睡眠障害・ストレス障害』などを低減できると実証されているようです。
身体的ストレスや精神的ストレスを低減することで、より健やかな毎日を過ごすきっかけになると言われています。
マインドフルネスで心身ともに豊かに
マインドフルネスを認識し、瞑想も取り入れることで心身ともに豊かに過ごせるようになると言われています。
ただし、心身ともに疲れすぎている状況下などでは、禅病などになりかねないので注意しておくのがおすすめです。瞑想だけではなく、適度な運動も取り入れていくと、より身体・精神どちらにも効果が実感できます。
ゆったりとさらに充実した毎日を過ごすためにも、適度にマインドフルネス瞑想を取り入れてみてはいかがでしょうか。