学生時代には使わなかった言葉を、社会人になってから初めて聞くということはよくあることです。

カタカナのビジネス用語はもちろんですが、日本語であっても、学生時代には耳にしなかった言葉を頻繁に聞くことになり、混乱する人は多いのではないでしょうか。また、聞いたことがある言葉でも、意味が分からなかったり使い方がわからなかったりすることも多いですね。

この記事では「落とし込み」という言葉がビジネスのシーンではどのように使われるのか考えていきたいと思います。

「落とし込み」のもともとの意味3つ

「落とし込む」「落とし込み」という言葉はビジネスの場面でよく使われますが、ではどのようなときに用いられるのでしょうか。

ビジネスシーンでの使われ方を見るまえに、まずは「落とし込む」のそもそもの意味を考えてみます。「落とし込む」には3つの基本となる意味があります。

「落とし込み」の意味1:落として中に入れる

「落とし込み」のもともとの意味、まず一つ目です。

「落とす」は説明する必要はないほどよく使われる動詞ですね。「込む」は前にくる動詞とペアで複合動詞を作りますが、ここでの意味は中に何かを入れるという意味です。

例文としては「ポケットにカギを落とし込んだ」や「下に落とし込むタイプの窓」がわかりやすいのではないでしょうか。

「落とし込み」の基本的な意味の一つ目は、「ものを落として中に入れる」という意味です。

「落とし込み」の意味2:他人をおとしいれる

「落とし込み」のもともとの意味の二つ目です。

例えば「競争相手をわなに落とし込む」「不幸のどん底に落とし込まれた」のように、対象が物ではなく人の場合に、相手をおとしいれるという意味で使われます。

「落とし込み」の基本的な意味の二つ目は、「他人をおとしいれる」という意味です。

「落とし込み」の意味3:抽象的な事柄を具体的な形や行動に反映させる

「落とし込み」のもともとの意味の三つ目です。

「落とし込む」は、いろいろな言葉に言い換えることができる抽象的な言葉です。この抽象的な言葉が、いろいろな場面でそのときどきに合った意味を持つビジネス用語として使われています。

アイディアや発想、まだはっきりとした形になっていない考えなどを具体的な行動・手順に反映させるというときに使われます。

「落とし込み」の基本的な意味の三つめは、「抽象的な事柄を具体的な形や行動に反映させる」という意味です。

「落とし込み」を置き換えられる言葉5種類

「落とし込む」のもともとの意味は「抽象的な事柄を具体的な形や行動に反映させる」ということですが、ではどのような言葉に置き換えることができるのでしょうか。

違う言葉に置き換えて考えてみると、「落とし込み」の意味が場面に合わせて理解できるでしょう。

「落とし込み」を置き換えられる言葉5種類を紹介します。

「落とし込み」を置き換えられる言葉1:当てはめる

「落とし込む」はまず、「当てはめる」という言葉に置き換えられます。

会議中などに要望をリクエストされることがありますが、この場合の「落とし込む」は「当てはめる」で置き換えられることが多いです。

例えば「○○の原因が何か、今までの実例に落とし込んでほしい」というときは、「今までの実例に当てはめてほしい」と言い換えることができます。

「落とし込み」を置き換えられる言葉2:適応させる

次に、「落とし込む」は、「適応させる」という言葉に置き換えられます。

例えば「新技術をこのプロジェクトに落とし込む必要がある」といったような場合には、「新技術をこのプロジェクトに適応させる」という意味になります。

「当てはめる」と似たところもありますが、前後の文脈でどちらか理解することができるでしょう。

「落とし込み」を置き換えられる言葉3:練り上げる

「落とし込む」は「練り上げる」という言葉にも置き換えることができます。

例えばプレゼンテーションを準備しているときに先輩や上司から「これでは落とし込みが足りないからもう少し考えてほしい」「もっと落とし込んでから提案してほしい」と言われることがあります。これはどちらももっと練り上げる必要があるという意味です。

改善を指示される場合によく聞かれる言葉です。

「落とし込み」を置き換えられる言葉4:まとめ上げる

「落とし込む」は「まとめ上げる」という言葉にも置き換えることができます。

例えば会議の後などに、「会議で出た意見を議事録に落とし込んでおく」という言い方をしますが、これは「議事録にまとめ上げておく」ということです。

「データを資料に落とし込む」といういい方もよく聞きます。こちらも「データを資料としてまとめ上げる」という意味になります。

「落とし込み」を置き換えられる言葉5:反映させる

「落とし込む」は「反映させる」という言葉にも置き換えることができます。

資料や議事録に「落とし込む」というのは「まとめ上げる」という言葉と同義ですが、これが例えば「計画表に落とし込む」という場合には、曖昧なままにしておくのではなく、ある程度具体的なものとして「計画に反映させる」ということです。

「まとめ上げる」と似ていますが、より具体的に資料に反映させるというふうに解釈した方がいいでしょう。

「落とし込み」は言葉を置き換えると意味が分かりやすい

以上、「落とし込み」がいろいろな言葉に言い換えられる例を挙げてきました。「落とし込み」はそれひとつでさまざまな意味を表すことができる便利な言葉ですが、場面によってはわかりにくいこともあります。

どのような意味かわからないときにはほかの言葉に言い換えて考えてみるとわかりやすくなるでしょう。

また、ビジネス用語に不慣れな人にはあえて使わずに、わかりやすい言葉で話した方が親切な場合もありますから、臨機応変に使い分けるといいのではないでしょうか。

「落とし込み」と間違えやすい言葉2種類

「落とし込み」はそれだけでいろいろな意味を表すことができる便利な言葉ですが、それゆえに間違えて使われることも多いようです。

「落とし込み」と間違えやすい言葉を2つ挙げます。

「落とし込み」と間違えやすい言葉1:スケジューリング

「落とし込み」と似た言葉に「スケジュール」があります。

「計画表に落とし込む」という表現は、今まで曖昧だったものをある程度具体的に「計画に反映させる」という意味でした。これは実際には今後の計画を立てて、計画表を作るということを意味します。

それに対して「スケジューリングする」という言葉は、関係者の都合をまとめて予定を合わせるという意味です。「予定を組む」という言葉で言い換えることができます。

どちらにも「計画」という言葉があるので混同しやすいですが、この二つは別の意味ですから注意しましょう。

「落とし込み」と間違えやすい言葉2:プロセス化

もう一つ、「落とし込む」と似ている言葉に「プロセス化」があります。

「プロセス化」は、「目標達成のための過程を明確にする」という意味です。達成したい目標があり、そこに到達するためにはどのようなことがどのような手順で必要か考えること、それを形にして示すことです。

つまり、「資料に落とし込む」「計画表に落とし込む」というのは具体的な作業であり、それを含んだ目標達成までの過程を明確にするのが「プロセス化」ということになります。

自分のわかりやすい言葉に置き換えて考えよう

ビジネス用語は難解だったり、頻繁に使われている割には言葉の意味が不明瞭だったりすることが多いです。わかりにくいと感じたときには無理にその言葉を使う必要はありません。むしろ自分がよくわかる言葉を使った方が、相手との考え方の齟齬もなくすことができるのではないでしょうか。

はっきりわからなくて不安なときは、自分のわかりやすい言葉に置き換えて考えてみましょう。