「諸々(もろもろ)」は、「諸々の事情」などの表現で使われる言葉です。
ビジネスシーンでも使用されますが、どのような意味や使い方があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
「諸々」の意味と使い方は?
「諸々」の意味は?
「諸々」とは、「多くのもの」「さまざまなもの」「いろいろなもの」という意味があります。例えば「その他諸々」と表現すれば、「その他の多くのもの」「その他のいろいろなもの」を意味します。「諸々の事情」であれば、「いろいろな事情」「さまざな事情」となります。
一方で、「諸々」は「全てのもの」という意味もあります。この場合、「多くのもの」「さまざなもの」「いろいろなもの」とはニュアンスが異なります。しかし、一般的には「多くのもの」「さまざなもの」「いろいろなもの」という意味で使用される例が多いと言えます。
「諸々」の意味の特徴は?
「諸々」の意味は、基本的には「いろいろなもの」と考えるとわかりやすいでしょう。ビジネスシーンで「いろいろなもの」と表現したい場合に、そのまま「いろいろなもの」と表現せずに「諸々」を使用することで、丁寧な印象を出すことができます。また、メールやビジネス文書でも「諸々」はしばしば使用されています。
「諸々」の使い方は?
「諸々」は「諸々の」と表現する例が多いですが、ほかにも使い方があります。以下、詳しく見ていきましょう。
「諸々の」の使い方は?
「諸々の」という表現は、名詞の前に「諸々の」を入れる使い方をします。例えば、「諸々の事情」「諸々の事項」「諸々の出来事」「諸々の要因」「諸々の原因」「諸々の条件」「諸々の能力」「諸々の変化」「諸々の説」など、多くの表現で使用できます。いずれも、名詞の前に「諸々の」があります。
「諸々の」は、ある事柄について「多くの〜」「さまざな〜」「いろいろな〜」と表現したい場合に使用します。例えば、いろいろな事情や多くの事情が存在する場合に、それらを「諸々の事情」と表現すると、わかりやすく伝えることができます。
その他の使い方は?
「諸々」には、「諸々の」ではなく「諸々を」「諸々について」といった使い方もあります。「その他諸々」という表現を例に、考えてみましょう。
「その他諸々」を使用する例には、「これらの事項や、その他諸々をご紹介いたします」といった表現が考えられます。この場合の「諸々」は、先ほど例に挙げた「諸々の」という表現とは異なります。また、同じ例で「これらの事項や、その他諸々についてご紹介いたします」と表現することもできます。こちらは「諸々について」と表現しています。
このように、「諸々」はある程度柔軟な使い方ができます。一方で、一般的には「諸々の」という使い方が多いと言えるでしょう。
ビジネスメールでの「諸々」の使い方は?
ビジネスメールで「諸々」を使用する場合は、「いろいろ」の代わりとして考えることができます。例えば、「諸々のアドバイスをいただき、ありがとうございました」といった表現で使用することができます。
ビジネスメールでは、一般的には「いろいろ」を使用する例は少ないと言えます。その代わりに、「諸々」などの言葉が使用されます。例えば「いろいろな事情」を「諸々の事情」に、「いろいろなアドバイス」を「諸々のアドバイス」に、「いろいろな資料」を「諸々の資料」に変えると、ビジネスメールに合った丁寧な印象を出すことができます。
「諸々」と「いろいろ」の違いについては、詳しくは後述します。
「諸々」の読み方は?
「諸々」は「もろもろ」と読みます。「諸々」の「諸」の音読みは「しょ」ですが、訓読みは「もろ」となります。
「諸」を使った言葉は音読みで「しょ」と読む場合が多く、「諸般(しょはん)」「諸事情(しょじじょう)」などの言葉がしばしば使用されています。一方で、「諸々」の「諸」は訓読みとなり、「しょ」ではなく「もろ」と読みます。「諸々」を「しょしょ」と読まないように注意しましょう。
「しょしょ」と読む言葉に、「諸所」「諸処」があります。漢字の構成が「諸々」と似ているため、紛らわしいですが、「諸々」は「しょしょ」ではなく「もろもろ」となります。
「諸々」を使った例文は?
それでは、「諸々」を使った例文をご紹介します。「諸々」は、「諸々の事情」「諸々承知いたしました」といった表現を中心に考えることができます。以下、詳しく見ていきましょう。
「諸々の事情」の例文
「諸々の事情」を使用した例文には、次のようなものがあります。
- 諸々の事情を考慮し、話し合う。
- 諸々の事情により、今回は計画を断念した。
- 諸々の事情により、お休みさせていただきます。
- コンサートの日程は、諸々の事情で延期された。
- 諸々の事情により、バンドの解散を決定した。
- 事件の背景にある諸々の事情に鑑み、判決を行う。
- 諸々の事情を検討した結果、今回はお断りさせていただきたく存じます。
- これらの諸々の事情を考えれば、今回の決定は当然のことだ。
「諸々の事情」は、非常に多くの場面で使用される表現です。特に「諸々の事情により」という表現が頻繁に使用されています。
「諸々のご事情」の例文
「諸々の事情」を丁寧にした表現として、「諸々のご事情」という使い方があります。「諸々のご事情」の例文は、以下のようになります。
- 諸々のご事情がございましたら、遠慮なくお申し付けください。
- 諸々のご事情がある方も、遠慮なくご相談ください。
- 諸々のご事情により予約の変更を希望される場合は、ご連絡をお願いいたします。
- 諸々のご事情がある場合でも、柔軟に対応いたします。
「諸々のご事情」は、相手の事情について表す場合が一般的です。上で挙げた例文でも、相手の事情を「ご事情」と丁寧に表現し、「諸々の」を合わせて「諸々のご事情」と表現しています。
「諸々の」を使用する例文
「諸々の事情」「諸々のご事情」以外にも、「諸々の」を使用する表現は多く見られます。例文としては、次のような例があります。
- 諸々の件、承知いたしました。
- この事件については、諸々の説が存在する。
- 必要書類に諸々の事項を記入する。
- 諸々の条件に一致するかどうか、きちんと確認する必要がある。
- 諸々の変化に対応する力をつけなくてはならない。
- 諸々の要因を整理し、図で示してください。
- 諸々の原因を考慮し、改善策を提案する。
「諸々の」を使用できる場面は多く、先ほど例に挙げた「諸々の事情」「諸々のご事情」と合わせると、非常に多くの使い方が可能です。
「諸々承知いたしました」の例文
「諸々」には、「諸々承知いたしました」という表現もあります。この場合、例文は次のようになります。
- 本案件につき、諸々承知いたしました。
- ご連絡ありがとうございます。諸々承知いたしました。
- 修正の件、諸々承知いたしました。
「諸々承知しました」という表現もありますが、「承知しました」より「承知いたしました」の方が強い敬意を示すため、「諸々承知いたしました」と使用する例が多いと言えます。一方で、同僚などが相手の場合は、「諸々承知しました」を使用することもできます。
「諸々~する」という表現の例文
上で例に挙げた「諸々承知いたしました」「諸々承知しました」ように、「諸々」は「諸々~する」という表現で使用する場合があります。「諸々~する」は、「諸々」の後に動詞を加える表現です。例文としては、次のようなものがあります。
- これらの資料を参考に、諸々ご説明いたします。
- お送りいただいた資料について、諸々確認いたしました。
- 諸々検討した結果、今回はお断りさせていただきたく存じます。
いずれも、「諸々~する(した)」という形になり、「諸々」の後には動詞が続きます。
その他の「諸々」の例文は?
「諸々」を使用したその他の例文には、次のような例があります。
- これらの事項や、その他諸々についてご紹介いたします。
- 必要な条件の諸々を踏まえ、最終的な決定を行う。
- 以上の諸々を踏まえたうえで、実践してみましょう。
「諸々について」「諸々を」といった表現も、「諸々」の使い方に含まれます。これらの表現を使った例文も知っておきましょう。
「諸々」の敬語は?
次に、「諸々」の敬語について考えてみましょう。「諸々のご事情」などの表現を使うと、相手に対して敬意を示すことができます。以下、詳しくご紹介します。
「諸々」の敬語はあるか?
「諸々」は、「いろいろなもの」という意味が基本です。「諸々」という言葉自体に敬語表現があるわけではありません。一方で、「諸々のご事情がある方も、遠慮なくご相談ください」のように、他の言葉を敬語表現にすることで、「諸々」を含めた文章全体を敬語表現として示すことができます。
「諸々」という言葉の敬語ではなく、「諸々」を使用した表現全体を考え、敬語表現にできる部分を考えることが重要です。特にビジネスシーンでは、敬語表現とともに「諸々」を使うことが大切です。
「諸々」を使った敬語表現の例は?
「諸々」を使った敬語表現には、「これらの資料を参考に、諸々ご説明いたします」といった表現があります。ここで使用されている敬語表現は、「ご説明いたします」の部分です。
「ご説明いたします」は、「ご(お)~いたす」という謙譲表現に加え、「いたします」の「ます」の部分で丁寧語が使用されています。丁寧語は話の相手を敬うので、「ご説明いたします」と言われた人を敬います。
また、「ご(お)~いたす」は謙譲語ですが、謙譲語は動作の対象を敬います。この場合、「説明」という動作の対象、つまり説明される人を敬います。「ご説明いたします」と言われた人を敬うことになり、上で述べた丁寧語と敬意対象が同じです。
「ご説明いたします」には謙譲語と丁寧語が含まれ、どちらの敬語も、説明される人を敬います。このような敬語により、「これらの資料を参考に、諸々ご説明いたします」は、「諸々」を使用した敬語表現となります。
「諸々のご事情」という使い方
先ほども例に挙げましたが、「諸々の事情」を「諸々のご事情」と表現することもできます。「諸々のご事情」の「ご」は敬語表現となり、相手に対して敬意を示すことができます。
「諸々のご事情がある方も、遠慮なくご相談ください」という表現を例に考えてみましょう。この場合、「ご相談ください」という部分でも敬語表現が使用されています。さらに、「諸々の事情」を「諸々のご事情」と表現することで、より強い敬意を表します。
「諸々」の類語は?
「諸々」の類語としては、「さまざま」「いろいろ」「種々」「各種」「多様」「多種」「多彩」「諸般」「多種多様」といった言葉が挙げられます。
「諸々」の意味は、「多くのもの」「さまざまなもの」「いろいろなもの」が基本となります。そのため、「さまざま」「いろいろ」のほか、「多く」という意味がある「多様」や「多種」といった言葉も「諸々」の類語として考えられます。
「諸々」と「色々」の違いは?
上で述べたように、「諸々」の類語には「色々(いろいろ)」が挙げられます。一方で、「諸々」と「色々」には、ニュアンスの違いがあります。特にビジネスシーンでは、「諸々」と「色々」の使い分けに注意しなくてはなりません。「色々」の意味や「諸々」との違いについて、詳しく考えてみましょう。
「色々」の意味は?
「色々」は、「種類の多いさま」「さまざま」という意味があります。これだけ考えると、「諸々」が持つ「さまざまなもの」「いろいろなもの」という意味と同じように考えることができます。一方で、ビジネスシーンなどでは「諸々」と「色々」はニュアンスに違いがあります。
「諸々」と「色々」の意味の違いは?
「色々」は、一般的には話し言葉で使用されるケースが多いです。そのため、ビジネスメールなどで使用する場合には、「色々」ではなく「諸々」を使用する必要があります。
また、「諸々」は「全てのもの」という意味も含まれています。「いろいろなもの」という意味と比較すると、実際の使用例は少ない傾向がありますが、言葉の意味としては「全てのもの」という意味が存在します。一方で、「色々」は、「全てのもの」とは意味が異なります。この点も「諸々」と「色々」の違いです。
ビジネスシーンでは「諸々」を使う
ビジネスメールに限らず、ビジネスシーンでは「色々」より「諸々」を使用することが好ましいです。「色々」は口語での使用が多いため、どうしてもフランクな印象を与える傾向があります。目上の人や取引先などに対しては、「色々」を「諸々」などの言葉に置き換える必要があります。
「諸々」を使用する場面を具体的にイメージしよう
今回は、「諸々」の意味や使い方、例文、類語、敬語などをご紹介しました。「諸々」は、「多くのもの」「さまざまなもの」「いろいろなもの」という意味が基本です。「全てのもの」という意味で使用されることもありますが、一般的には「いろいろなもの」という意味で考えることができます。
「諸々」は非常に多くの場面で使用できるので、意味や使い方を知っておくと便利です。例文をもとに、「諸々」を使用する場面をイメージしてみましょう。「諸々の事情」などの代表的な表現を中心におさえておくと、「諸々」の意味や使い方がわかりやすくなります。ビジネスシーンでぜひ活かしてみてください。