「おみそれしました」は、日常の会話で頻繁に耳にすることはありませんが、年配者には馴染みの深い言葉です。若い人でも言葉の意味を知っておくと、会話の奥行きを持たせるテクニックとして利用できる言葉です。

ここでは「おみそれしました」の例文や類語、語源や敬語などを詳しく解説します。知識は荷物になりません。日常生活のバリエーションを増やす意味でも、「おみそれしました」の知識を深める参考にしてください。

「おみそれしました」の意味と使い方

「おみそれしました」の漢字表現

「おみそれしました」を漢字で表すと、「御見逸れしました」になります。

この一文を単語ごとに解説しますと次のとおりになります。

「御見逸れしました」は、お(丁寧あるいは尊敬を表す助詞)+見逸れ(気付かないという意味の名詞)+する(何かをなすという意味の動詞の過去形)という事が言えます。

「おみそれしました」の意味

「おみそれしました」は、「気付かなかった」という意味ですが、詳しく解説すると以下のようになります。

  1. 行き会っても誰であるか気付かないこと。
  2. 誰であるかを忘れたことに対する謙遜したあいさつ語。
  3. 相手の優れた才能や技術などに気づかないでいること。
  4. 相手に対する誤解や見方をわびるときの挨拶語。

以上のような意味で使われる言葉です。

「おみそれしました」の使い方

「おみそれしました」は、「見逸れる」という動詞が語源になっていますが、「お」と「しました」が合体することによって、「見逸れる(動詞)」が「見逸れ(名詞)」として使われている言葉です。

「おみそれしました」は、もともと謝罪の意味を込めて使われる言葉ですから、さらに他の「謝罪」を表現する言葉(申し訳ありません、すみませんなど)と一緒に使うのは「馬から落馬する」と同じ意味になるので気をつけましょう。

目上の人への使い方

「おみそれしました」は、目上の人に使っても大丈夫なのか、と心配の人もいるでしょうが、答えはYESです。

「おみそれしました」は、「見逸れる」という動詞からきた言葉で、相手のことを「誤解する」とか、「過小評価した場合」など、目上の人に対して失礼な言動のあった場合に「謝罪」を込めて言う言葉です。丁寧語の「お」と「しました」を付け加えることによって「謝罪文」になっていますので、目上の人に使ってもOKです。

「おみそれしました」の例文

「おみそれしました」は会話専用の言葉といえますが、正しく使わないと、その場が白けさせたり、相手に不快感を抱かせ可能性があります。ここでは上司や同僚、あるいは部下に対する場合など、それぞれの正しい使い方の例文を紹介していきます。言葉はT・P・Oを考えないで使うと恥をかきますので、例文を参考にしながら、正しく使うように心がけましょう。

上司に対する使い方例文

ここでは「おみそれしました」を職場の上司に対して使う場合の例文を紹介します。

例文1:○○部長先日の囲碁大会で優勝されたとか、噂には聞いておりましたが本当に「おみそれしました」。わたしも将棋が大好きです。今度ぜひ一度ご指南いただけませんか。

例文2:○○課長がこんなにゴルフがお上手だなんて、本当に「おみそれしました」。上達するには日頃からどんな練習したらいいのか教えてください。

ビジネスシーンでの使い方例文

「おみそれしました」をビジネスシーンで使う場合の例文を紹介します。

例文1:先日いただいた計画書の件ですが、こちらの要求がほぼ投影されており社長も満足されております。さすが貴社の高度な技術「おみそれしました」。前向きに検討させていただきます。

例文2:先日は当社の社員の失態を穏便に処理していただき感謝いたします。咄嗟の機転本当に「おみそれしました」。今後ともよろしくお願いいたします。

部下や同僚への使い方例文

「おみそれしました」を部下や同僚に対して使う場合の例文は以下のようになります。

例文1:○○君(部下)にこんな絵描きの才能があったなんて「おみそれしました」。趣味だなんて謙遜だよ。素人の域を出た見事なでき栄えだよ。

例文2:××さん(同僚)の計算力は噂どおりでしたよ、「おみそれしました」。おかげで期日どおり計算書が提出できます。

「気付きませんでした」の意味での使い方

「気付きませんでした」という意味で使われる場合もありますので、この場合の例文を紹介します。

例文(メール文):先日は「おみそれしました」。すっかりお綺麗になっていたので気付きませんでした。あとであなただと気付いたのですが、挨拶もせず失礼しました。

「おみそれしました」の類語

「おみそれしました」の類語には、「恐れ入りました」や「脱帽しました」、「感服しました」、「すごいですね」、「さすがですね」などがあります。それぞれ正しく使う場合の例文や間違った使い方などの例文を紹介しますので、実際に使う時の参考にしてください。

「恐れ入りました」の例文

「恐れ入りました」は、「恐れ入る」の過去形ですが、「御見逸れする」の類語として使う場合と、「恐縮する」という意味や、「感謝する」という意味でも使われます。ここでは「御見逸れする」の類語としての例文を紹介します。

例文1:先日はおもいがけずお招きをいただき、店屋ものではない「手料理」を満喫させていただきました。奥様のお手料理には本当に「恐れ入りました」美味しかったです。

「恐れ入りました」の間違った使い方例文

「恐れ入りました」には、「おみそれしました」の類語の意味で使われる場合と、「恐縮する」や「感謝する」意味で使われる場合があります。ここでは「おみそれしました」の意味としては間違った使い方を紹介します。

例文1:先日は面倒な事案をお願いし、その上適切に処理していただき「恐れ入りました」。おかげで本当に助かりました。

「脱帽しました」の例文

「おみそれしました」の類語として「脱帽しました」がありますが、「脱帽しました」は目上の人には使わない方が良い言葉です。それは「脱帽する」が、相手の実力が「自分より上である事を認めて降参する」という意味なので、目上の人には失礼にあたるからです。

例文:○○君(同僚・部下)きみの運動能力には「脱帽しました」。なにやってもさまになっていて感心したよ。

「脱帽しました」の間違った使い方例文

「脱帽しました」は、目上の人には使わない方が良い事を説明しましたが、間違った使い方は以下のようになります。

例文1:○○部長は仕事だけでなくゴルフの腕前も超一級なので「脱帽しました」。(こういう場合は「おみそれしました」を使うのが正解です。)

例文2:××課長は歌がお上手ですね。わたしも歌は好きなのですが「脱帽しました」。(この場合も「おみそれしました」か「感服しました」を使いましょう。)

「感服しました」の例文

「おみそれしました」の類語に「感服しました」がありますが、「感」は感動するという意味があり、「服」は心からという意味がありますので、「おみそれしました」とほぼ同じ使い方ができます。つまり目上の人にも使うことができるフレーズです。

例文1:今日の○○部長の剣道の腕前には、本当に「感服しました」
例文2:××さんの書道の腕前は、評判どおりで「感服しました」

「感服しました」の間違った使い方例文

「おみそれしました」の類語「感服しました」の間違った使い方を紹介します。「感服しました」は目上の人に使うことは可能ですが、場合によっては失礼にあたることがあります。それは次のような場合です。

例文:○○部長の威厳ある挨拶には、今日も「感服しました」。(この場合、挨拶には感服したけれど、日頃の性格や行動にまで感服しているわけではない、というニュアンスもあるので、注意が必要です。)

「すごいですね」の例文

「おみそれしました」の類語「すごいですね」について検証します。「すごいですね」は、「おみそれしました」の類語ですが、丁寧語にも尊敬語にも謙譲語にもならない言葉です。したがって目上の人には使えない言葉であると覚えておきましょう。気兼ねのない友人相手や、職場だったら同僚や部下には気軽に使える言葉です。

例文:昨日のゴルフで90切ったとか、まだゴルフ始めて2年足らずと聞いていますが「すごいですね」。

「すごいですね」の間違った使い方例文

「おみそれしました」の類語として「すごいですね」を使う場合は、使う相手によっては失礼にあたる場合があるので気をつけましょう。間違った使い方の例文は次のとおりになります。

例文:○○社長のオフシャルハンデは「シングル」と聞いていますが「すごいですね」。(この場合社長に対して平社員が「すごいですね」を使うのは不適切です。「すごいですね」を使っても差し支えないのは部長クラス以上でしょう。)

「さすがですね」の例文

「おみそれしました」の類語として「さすがですね」を使う場合もありますが、さすがの漢字には「刺刀」・「刺鉄」と「貴家」・「流石」の4つがあり、会話用語として使う時は注意が必要です。「さすが」は形容動詞として使う場合と、副詞として使用する場合がありますが、ある事を認めながらも否定する意味も含まれるので、目上の人にはNGの言葉です。

例文:君(友人)の奥さんの料理の腕は「さすがですね」。

「さすがですね」の間違った使い方例文

「さすがですね」を使う場合、「さすが」は上から目線なので、目上の人に使うのは、相手を軽ろんじる意味にも取られがちなので気をつけましょう。間違った例文は次のようになります。

例文:○○部長、昨日はわたしの失敗を見事に処理していただきありがとうございました。さすがですね。(新人の頃は時々こういう失敗をしがちですが、こういう場合「さすがですね」は大変失礼な言い方になりますので気をつけましょう。)

「おみそれしました」の語源

「おみそれしました」の語源は動詞の「見逸れる」で、「見逸れる」は「見落とす」とか「気付かない」・「見損なう」という意味になります。「見逸れる」は文語ですので、現在では「おみそれしました」という形で、会話用語としては良く使われますが、文章語としては使われなくなった言葉で、次の2とおりの意味に使われています。

1.知人と出会ったのに気付かなかった時。
2.誰かの業績を過小評価してしまった時。
などです。

「おみそれしました」の言い換え

ここでは「おみそれしました」の言い換えについて検証していきます。言い換え方は「類語」を使います。例文は以下になります。

例文1:○○部長(目上に対しての場合)の正確なドライバーショットは本当にお見事で、ついつい「見惚れてしまいました。(感服いたしました)」。

例文2:××君(同僚や部下に対して)は噂どおり機械に強いと評判ですよ。本当に「すごいですね」。

「おみそれしました」といわれた場合の返事は?

「おみそれしました」といわれた時の返し方には、久し振りにあった知人に言われた時と、何かを褒められた時の2とおりがあります。例文は以下になります。

「久し振りにあった知人に言われた時の例文」
例文1:お元気でしたか。
例文2:お変わりありませんか。

何かを褒められた時、
例文1:恐れ入ります。
例文2:ありがとうございます。

「おみそれしました」の敬語表現

ここでは「おみそれしました」の敬語的表現(丁寧語・尊敬語・謙譲語)について検証します。正しい知識は財産になりますから、以下に紹介する表現方法をしっかり頭に入れておきましょう。

丁寧語

「おみそれしました」は、このままですでに丁寧語表現になっている言葉です。「おみそれしました」は名詞の「見逸れ」や動詞の「見逸れる」が語源ですが、名詞の「見逸れ」に丁寧語の「お」と「しました」を合体させることによって、丁寧語としての表現になっています。

例文1:あなたの才能には常々「おみそれしております」。
例文2:先日は貴方と気付かずおみそれしました。

尊敬語

「おみそれしました」の尊敬語ってあるの、という疑問もあるかとおもいますが、語源の「見逸れる」が、「見損なう」など否定的な意味が含まれた言葉なので、尊敬語としての表現はありません。

尊敬語は目上の人を敬うという意味で使われる言葉ですから、唯一「おみそれ申し上げます」が尊敬語におもえますが、「申し上げる」は「言う」の謙譲語で、尊敬語は「おっしゃる」になり、「申し上げます」とはいわないからです。

謙譲語

「おみそれしました」の謙譲語表現について解説しますと、謙譲語の「申し上げます」や「致しました」と合体させることで謙譲語的表現になります。

例文1:わたしにはなんとしても解けなかった難解な「なぞなぞ」を、こともなげに正解した○○係長には本当に「おみそれいたしました」。

例文2:先日部長の奥様を「おみそれ致しまして」、奥様からお声をかけていただき本当に「恐縮いたしました」。よろしくお伝えくださいませ。

「おみそれしました」は適所で使えば2倍の効果が

「おみそれしました」は、現在は会話専用語としてのみ使われている言葉です。語源の「見逸れ」に丁寧語の「お」や「しました」、さらには謙譲語の「申し上げます」や「いたしました」と合体させる事によって、敬語的表現として使える言葉です。

特に目上の人に対する使い方を気をつければ、いろいろの場面で役に立つ言葉ですので、相手に失礼にならないように上手に使って、対人関係を良好に保つアイテムとして役立てましょう。