会社によっては、『管理職候補』を求人で募集しているところがあります。

彼等は新人研修を終え実務を学び、そこから速やかに管理職として昇進し業務にあたることを、入社当初から期待されているわけです。

僕が以前勤めていた会社にも、管理職候補として入社してきた人が数多くいました。

しかし、その中の7~8割は、ハッキリ言って仕事ができない、いわゆる「使えない社員」だったのです。

この記事では、その理由とそんな人物に遭遇した場合に、どう対応すべきかについて解説します。

 

管理職候補とは

そもそも管理職候補として採用された人は、通常の求人(社員募集)で採用された人とは、扱いが異なります。

会社によって異なる点も多いですが、管理職候補の役割は『いち早く職場と業務に慣れて、管理職として部下を管理し、会社の利益に貢献すること』です。

つまり、管理職候補には責任のある業務を速やかに任せることが予定されているので、求められるレベルも高くなります。

そのぶん給与面などの待遇は良いですし、自ら応募して採用されているので、モチベーションが高く即戦力となる人材でなければなりません。

 

管理職候補で入社してきた人が使えない理由

ただ、現実には管理職候補として入社した人が、期待していた実力が全くなく使えないということが少なくありません。

僕の経験上、それには以下の理由があります。

 

1. プライドの高さが成長を阻害する

管理職候補として入社した人の多くは、「自分には特別な能力がある」という自信を持っています。この自信自体は悪いことではありませんが、問題は実力が伴わないケースが多いことです。

典型的な行動パターン

  • 同期や先輩社員を見下す態度
  • 指導やアドバイスを受け入れない
  • 失敗を認めたがらない
  • 周囲との協調性に欠ける

このようなプライドの高さは、本人の成長を妨げるだけでなく、職場全体の雰囲気を悪化させる原因にもなります。

 

2. 待遇目当ての動機の問題

管理職候補の募集は、通常の採用よりも好条件で行われることが多いため、その待遇に惹かれて応募する人が少なくありません。

問題となる動機

  • 高い給与への憧れ
  • 早期昇進への期待
  • 社会的地位への欲求
  • 実際の業務内容への興味不足

このような動機で入社した人は、実際の業務に対するモチベーションが低く、困難に直面すると簡単に諦めてしまう傾向があります。

 

3. 会社側の期待値設定の問題

企業側も管理職候補制度を導入する際に、期待値の設定を誤ることが多々あります。

よくある期待値の誤り

  • 即戦力としての過度な期待
  • 管理職経験がないことへの配慮不足
  • 育成期間の軽視
  • 個人の適性の見極め不足

 

4. 管理職未経験者の現実

管理職候補として応募する人の多くは、実際には管理職経験がありません。これは制度の性質上、当然のことでもありますが、問題は企業側がこの事実を軽視しがちなことです。

管理職未経験者が直面する課題

  • 部下の管理方法がわからない
  • 責任の重さに圧倒される
  • 判断力不足による混乱
  • ストレス耐性の不足

 

管理職とプレイヤーの能力は別物

管理職の経験がない人の場合、プレイヤーとして働いていた時の実績(営業であれば社内でNo.1を取ったことがある等)を、参考にされがちです。

しかし、いくらプレイヤーとしての成績が優秀でも、それと管理職に適性があるかは完全に別問題です。

僕がいた会社では、プレイヤーとしての成績が優秀な人が管理職に昇進していましたが、その中のほとんどはプレイヤー時代のような活躍ができていませんでした。

プレイヤーは自分さえ良ければ問題なく、周囲に気を配ったりフォローしたりする必要は基本的にありません。

ところが、管理職になると今まで気に掛ける必要がなかった部下の管理や教育こそ、主要な役目であり仕事となります。

こことで問われるのは、部下の調子・様子を細かに確認し、必要があればフォローし導いていくこと。

つまり、求められるスキルが全く違うため、プレイヤー時代のように上手くできない人が続出するのです。

彼等はプレイヤーとして1度成功し自信を持っているので、上手くできないことにストレスを感じます。

けれど誰にも教えてもらえず、相談もできず、人知れず潰れていきます。

 

なぜ優秀なプレイヤーが管理職で失敗するのか?

多くの企業で、プレイヤーとして優秀な成績を残した人が管理職候補として採用されます。しかし、プレイヤーとしての能力と管理職としての能力は全く別物です。

プレイヤーに求められる能力

  • 個人の成果を最大化する能力
  • 専門スキルの習得と活用
  • 自己管理能力
  • 競争意識

管理職に求められる能力

  • チーム全体の成果を最大化する能力
  • 人材育成・指導能力
  • コミュニケーション能力
  • 戦略的思考力
  • 問題解決能力

 

管理職に必要な5つのコア能力

1. 人材育成能力

部下一人ひとりの能力を見極め、それぞれに適した指導方法を実践する能力です。

2. コミュニケーション能力

様々な立場の人と効果的にコミュニケーションを取り、チームの結束を高める能力です。

3. 戦略的思考力

長期的な視点で組織の方向性を定め、適切な戦略を策定する能力です。

4. 問題解決能力

複雑な問題を分析し、最適な解決策を見つけ出す能力です。

5. 意思決定能力

限られた情報の中でも、迅速かつ適切な判断を下す能力です。

 

被害を受けるのは現場の社員

管理職候補が使えない人の場合、最も苦しい思いをするのは現場の社員です。

ゆくゆくは管理職として活躍することを期待され入社したのに、フォローすることばかりで自分の仕事が増えてしまうからです。

しかも、今は自分の方が立場が上でも、いずれ管理職となったら上司になる可能性もあるので、必要以上に気を遣うことも。

そもそもある程度の実力があると踏んでいたため、そこが違うと元々組んでいたスケジュールを修正せざるを得ません。

もちろん仕事なので文句は言えませんが、納得できない気持ちは持ってしまうものです。

 

【重要】なぜ育成が必要不可欠なのか?

育成こそが解決の鍵

管理職候補が使えない問題の根本的な解決策は、実は「育成」にあります。多くの企業が見落としているのは、管理職候補も一人の人材であり、適切な育成を行えば必ず成長するという事実です。

育成の重要性を示す3つの理由

1. 能力開発の可能性

どんな人材でも、適切な指導と環境があれば能力を伸ばすことができます。

2. 投資効果の最大化

採用にかけたコストを無駄にしないためにも、育成による投資回収が重要です。

3. 組織全体の成長

一人の管理職候補の成長は、組織全体の成長につながります。

 

効果的な育成方法の実践

1. 段階的な責任付与

いきなり大きな責任を与えるのではなく、段階的に責任を増やしていく方法が効果的です。

段階的育成のステップ

  • 第1段階:業務理解と基本スキル習得
  • 第2段階:小規模チームでのリーダー体験
  • 第3段階:部分的な管理業務の担当
  • 第4段階:完全な管理職業務の実施

2. メンター制度の活用

経験豊富な管理職をメンターとして配置し、継続的な指導を行う制度です。

メンター制度の効果

  • 実践的なアドバイスの提供
  • 心理的なサポート
  • 人脈形成の支援
  • キャリア開発の促進

3. 定期的なフィードバック

定期的な面談やフィードバックを通じて、成長を促進します。

効果的なフィードバックの要素

  • 具体的な行動に対する評価
  • 改善点の明確な指摘
  • 次の目標設定
  • 継続的なサポートの約束

4. 実践的な研修プログラム

座学だけでなく、実践的な研修プログラムを組み込みます。

研修プログラムの例

  • ケーススタディ
  • ロールプレイング
  • シミュレーション
  • 他社視察

 

管理職候補との効果的な接し方

現場社員としての対応方法

1. 感情的にならずに冷静に対応する

管理職候補が使えないからといって、感情的に接するのは逆効果です。

冷静な対応のポイント

  • 事実に基づいた指摘
  • 建設的な提案
  • 相手の立場への配慮
  • 長期的な視点での関係構築

2. 教育的な姿勢を持つ

管理職候補を敵視するのではなく、育成対象として見ることが重要です。

教育的姿勢の実践

  • 知識の共有
  • 経験の伝承
  • 失敗への寛容さ
  • 成長への期待

3. 適切な距離感を保つ

過度に接近することも、完全に避けることも適切ではありません。

適切な距離感の指標

  • 仕事上の必要な関係性
  • 個人的な感情の切り離し
  • 将来の関係性への配慮
  • 職場全体への影響考慮

 

組織としての改善策

1. 採用基準の見直し

管理職候補の採用基準を根本的に見直すことが必要です。

改善すべき採用基準

  • 管理職としての適性評価
  • 学習意欲の確認
  • 人間性の重視
  • 長期的な成長可能性

2. 育成プログラムの充実

体系的な育成プログラムを構築し、継続的な改善を行います。

育成プログラムの要素

  • 明確な目標設定
  • 段階的なカリキュラム
  • 実践的な訓練
  • 成果の測定と評価

3. 評価制度の改善

管理職候補の評価制度を改善し、適切な評価を行います。

評価制度の改善点

  • 多面的な評価
  • 成長過程の重視
  • 長期的な観点
  • フィードバックの充実

 

企業が取り組むべき根本的な改革

1. 組織文化の変革

管理職候補を育成する文化を組織全体に浸透させることが重要です。

文化変革の要素

  • 人材育成の重要性の認識
  • 失敗を許容する環境
  • 継続的な学習の推奨
  • チームワークの重視

2. 制度の整備

育成に必要な制度を整備し、継続的な改善を行います。

必要な制度

  • 育成プログラム
  • 評価制度
  • 研修制度
  • メンター制度

3. 経営陣のコミットメント

経営陣が人材育成に対して強いコミットメントを示すことが必要です。

コミットメントの表現

  • 育成への投資
  • 長期的な視点
  • 継続的な支援
  • 成功事例の共有

 

自分の身の振り方を考える

管理職候補が使えない人で管理職となれない場合、会社は新たに管理職候補を募集したり、既存社員を管理職にしようと画策します。

ここで注意したいのが、自分にその話が回ってくるかもしれないこと。または管理職のフォローを命令されたりするなど、これにまつわる負担の皺寄せが来るかもしれないことです。

今はどの会社も経費削減・人件費削減に躍起となっており、社員にかかる負担はどんどん増しています。

もしあなたが、今の会社に居続けることにメリットを感じなかったり、楽しくも面白くもないと感じているのであれば、今後の身の振り方を考えるべきです。

具体的には、

・転職
・起業
・独立

などです。

今の時代は、多様な働き方があり生き方があります。

そこに正解も不正解もなく、重要なのは「自分が納得し満足できるか」ということ。

あなただけのキャリアを描き、充実した人生を送りましょう。

キャリア構築について知りたい方は、以下の記事で解説してます。

30代の男性を対象にしていますが、社会人の方であればどなたでも参考にしていただけると思います。